病院のお医者さんは病気を治しますよね。美容室の美容師さんは髪の毛を治す。それは美容師さんしかできないですよね。

－美容師として「美」とは何ですか？

美容師さんは基本的にはお客様の髪を切るとか、パーマをかけるとかは、当たり前のこと。美容師はそういう仕事なので。それが「美」っていう感じではない。

プラスアルファ髪の毛を治すというか、悩みを改善するというか。病院のお医者さんは病気を治しますよね。美容室の美容師さんは髪の毛を治す。それは美容師さんしかできないですよね。免許がある人しかそれでお金をもらえないので。「美」とはそういうことなのかなって。それができて容姿を変える、可愛くする、そういう方につながっていくんじゃないかなっていうのはありますよね。

－独立したてのサロンオーナーにアドバイスするとしたら、どういうアドバイスをしますか？

それもサロン経営で一番大事にしていることとリンクするかな。数字的なことはわからないです。「これをこうした方が数字が上がるよ」とか、「こういうものを取り入れたらヒットするよ」ってわからないです。ただ、お客様のために全力を注ぐっていう気持ちですかね。

たぶん糀谷じゃなくて青山とか表参道とか芸能人をカットしている人の方が技術は上手いんじゃないかな。そういう技術やステータスを求めるお客様は糀谷で切らないんじゃないかなって思うんですよ(笑)。そこじゃない人たちの心を掴むのはたぶん接客だと思うんです。

うちらって「糀谷で一番になりたい」っていうのが目標なんです。これが蒲田までいっちゃうとまたちょっと違う。「蒲田・糀谷で一番になりたい」ってなると目標がちょっと違ってくる。糀谷で一番になるから意味がある。ここの人たちに愛されたいというか、「糀谷の美容室って何？」っていったら「caro」みたいな。そういうのは、まだ9坪くらいのところでやっていた時から言っていたことで。でもそこはちょっと見えてきているところはあります。（糀谷の）どこ行っても美容室「caro」って知っている。「caroってあそこね」みたいな。

－地域に根付いてきたという感じですね。

そうですね。だからと言って糀谷の地域密着のごてごてな美容室じゃないっていうところが面白くて。それこそ都心に行かなくても都心のように味わえるような美容室だったり。そういう意味では雑誌の撮影もやっています。それもお店のステータスではなく、お客様のステータスを上げるため。「雑誌に載っているところで切ってもらっている」という。それが青山とか原宿とか表参道だったら当たり前じゃないですか。自分たちももちろん楽しいですけど、お客様が来て雑誌見せて、みんなが知っているような一般誌に大田区萩中とかって出ていると、やっぱり地元の人って「おお、萩中出てんじゃん」となる。

地元が有名誌に出ているというか、そこのステータスは敢えて創っています。そこにはお金も投資するし。お客様のステータスが上がるっていうところを狙いましたね。あんまり出ようと思っても雑誌に出られないですからね。出方がわからないし。そういう所で自分たちが出られるようになったっていうところも、自分のアンテナを張ってちょっとイケイケな状態で行ったからこそリンクしてきた。

－山口さんの印象ってどうですか？

真面目。私との関係は絶対に崩さないですね。一線を置いているんですよ。これだけ20年近く一緒にいるのに。たぶん緊張感は常に持っている。地元の中学校の後輩なんです、私が3年生の時に山口は中学1年生で。その時には共通点が全くなかった。専門学校も同じなんですけど一緒ではなかったんです。私は一年制で彼は二年制。

そして、蒲田のお店で新卒として山口が入ってきました。そのときには私は3年目だったんですね。若かったんで結構イケイケだった。やっぱり結構怖い存在だったと思います。昔の美容師はそうじゃないですか。結構男が多かったので上下関係は厳しいですけど、すごく仲良かった。毎日のように飲みに行って。山口もかわいいやつなので、毎日連れていかれて。でも、私は仕事に対してめちゃくちゃ厳しかった。それこそ何も言えなくなっちゃうくらい怒るんで(笑)。たぶん山口の中では今でも私に対しての緊張感はあるんじゃないかな。

で、なぜ辞めないかっていうと、たぶん接客って意味でブレがないのでそこに共感しているのかな。山口もめちゃくちゃ接客良いんです。私からしたらくそ真面目すぎますけどね（笑）。私に持ってないところを持っているんです。私は基本的に結構ちゃらんぽらんなんで、ちゃんと形通りにしっかりとできるタイプではない。そこは山口にも任せちゃって。お客さんの層も違います。ザ・職人ですよね。知識もすごい。何言っても答えるので。知恵袋じゃないですけど(笑)。みんな他のスタッフも、そういうところは頼りにしていますよね。